Warning: Use of undefined constant works - assumed 'works' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/users/web11/7/8/0241787/www.toppan-tec.co.jp/wp/wp-content/themes/tec/functions.php on line 94
ものづくりの人々。[紙営業士 西谷 浩太郎さん/第5回]|TEC-Lab+|TOPPAN EDITORIAL COMMUNICATIONS

INTERVIEW

2019.04.1

ものづくりの人々。[紙営業士 西谷 浩太郎さん/第5回]

ひとつの印刷物が完成するまでに、その過程にはさまざまな人がかかわっています。
彼らは日々、どのように考え、制作の現場に向き合っているのか。
あらゆる職種の方々へのインタビューを通して、
今の時代において、人々がものづくりで大切にしていることを探ります。
一人目に登場していただいたのは、平和紙業の紙営業士・西谷浩太郎さん。
紙加工への情熱が生まれたきっかけや仕事のこだわりなどを、じっくりと語っていただきました。

 

西谷浩太郎

にしたに・こうたろう/1977年、大阪生まれ。立命館大学政策科学部卒業。2001年、平和紙業株式会社入社。入社のきっかけは就職活動で手にした会社案内のデザインに惹かれたことから。大阪の本店で7年間勤務した後、東京へ異動。営業統括本部東京販売推進部に所属し、紙のプロモーション活動を行う。紙加工によるものづくりにも詳しく、多くのデザイナーから頼られる存在である。

平和紙業株式会社
1946年創立。ファンシーペーパーを中心に取り扱う紙の専門商社。 特殊紙、高級紙、技術紙をはじめとする各種紙素材の開発、販売、輸出入のほか、紙を素材とする新商品開発と商品化を行う。
http://www.heiwapaper.co.jp/

第5回 予期せぬことが、紙をおもしろくする。

最近、開発された紙をご紹介いただけますか?

西谷:フリッター」という紙がリニューアルされて、5つの新色が加わりました。ネーミングの由来は料理のフリット(揚げ物)で、紙に凹凸感があるのが特徴です。この中でハイホワイトという白い紙の開発に私も携わりました。クリーム系の白い色はすでにあったのですが、青白い、真っ白な紙を作りたかったんです。
以前までは黄味がかった白のほうが高級感があるとされていて、真っ白な紙はデザインの中であまり使われていませんでした。しかし、今求められる白さは真っ白です。

白さにも時代性があるのですね。この紙、手触りがもこもこしていてかわいらしいです。

西谷:紙の凹凸感を作るには相当な技術が要ります。あえて紙の地合いを崩すのですが、普通はここまで凹凸になりません。地合い崩しの手法を知ったうえで、それをもっと崩すにはどうすればいいのか、さらには崩したときにどういうおもしろみが生まれるのかをイメージしながら進めます。
紙の開発というのはとても専門的なことで、紙を作る機械を十分に知っていたとしてもうまくいくとは限りません。現場での知識、情報、経験の量。これに尽きます。紙は、何十年もの蓄積でできているんです。

紙はふだん何気なく接していますが、その裏には作り手の積み重ねが込められていたのですね。ただ、紙を取り巻く環境が大きく変わっていますが、これから紙の役割というのはどうなるでしょうか?

西谷:5年前は10年後の想像が何となくできました。今は2年後さえも想像ができません。それほど出版や、商業印刷物を中心に環境が激変しているのが今です。 出版関連の紙の使用量は相当な勢いで落ちていて、止まるとも回復するとも思えません。2010年に電子書籍元年と言われ、いよいよ紙の本が電子書籍にとって代わると語られて10年が経とうとしていますが、今、電車に乗ったときに車内をぐるっと見まわして、電子書籍で本を読んでいる人が果たしてどれくらいいるか。単純に紙媒体から電子媒体へと置き換わるという話でもなさそうです。

それと、これからデジタル印刷が想像を絶する勢いで世に出てくるはずです。これまではオフセット印刷が中心でしたが、これによって私たち紙屋の立ち位置も変わってくると思います。

デジタルへの過渡期の中で

デジタル印刷はオフセット印刷と何がちがうのですか?

西谷:たかだか数年前までは、印刷の品質、スピードなどをオフセット印刷と比較すると、デジタル印刷には超えられない差がありました。しかし、それもこの数年でその差はどんどん縮まり、もう一般の人が見ても、その見分けがつかないレベルまで品質は向上し、スピードも年々上がってきています。また、デジタル印刷は、現場の技術、知識、経験による差がそこまで大きく出ないのも特徴のひとつと言えます。
一方で、オフセット印刷は紙とインクのにじみ、紙の表面の凹凸などが影響して予期せぬことが起きます。その辺は現場の経験や勘でカバーするのですが、半面、それこそがオフセット印刷のおもしろさだと思っています。うまくいかなかったり、失敗することもありますが、そこから次につながるヒントをもらえるのです。紙の加工についても同じことが言えて、予期せぬ方向に行ったとき、紙のおもしろさを発見できるんです。

西谷:もちろん、デジタル印刷にもいいところはあります。小ロットでの印刷が可能ですから、今まで印刷物を作れなかった人たちにも手が届くようになりました。

コミケで売られている同人誌の装丁が年々豪華になっているとか。

西谷:ええ、同人誌での需要は増えていますね。紙媒体は元々マスだったはずですが、どんどん個になってきていると言えます。ほぼプライベートに近い。これは大量印刷を基本とするオフセット印刷ではありえなかったことです。
紙の使われ方で言うと、紙からデジタル媒体に切り替わる過渡期ではないかと思っています。わざわざ紙媒体にする意味はあるのか、そこから問い直されているような気がします。でも私自身はあわてていません。こういうときこそ、「等身大の鏡」を持っておかないと。紙屋であることを外して考えても仕方がありませんから。

西谷さんにとって魅力ある紙とは何でしょうか?

西谷:よいものができあがったとき、そこに紙もひとつの要素として絡んでいたら、それはよい紙だと思います。よい装丁の本だなと目にとまるものって、とてもバランスがとれているんです。デザイナーさんの意図で紙が選ばれ、デザインがはまり、さらに印刷や紙加工との相性もある。さまざまな要素が関連しあう中で、ものづくりは成り立っています。
紙をあえて主張させるように使ったかっこいいデザインもあるし、主張のないものもあります。世の中の大半は後者ですね。そのものに合っていることが大切です。ですので、特別な紙でなく普通のコート紙が選ばれることがあってもいいと、私は思っています。紙は素材なので。

デザイナーのみなさんは手元にすべての紙の見本や情報があるわけではないですから、紙の相談を受けたらいつでも応えられる存在でありたい。紙の加工や開発も含めて、これからも突き詰めていきたいと思います。

(終わります)
インタビューは2018年9月6日と12月21日に行われました。
←第4回へ

目次
・第1回 実は、紙が好きなわけではないんです。 2018.10.12
・第2回 OKフロートで検索したら、西谷と出てきた。 2018.10.26
・第3回 師匠のこと。 2019.02.08
・第4回 「等身大の鏡を持ちなさい。」 2019.03.04
・第5回 予期せぬことが、紙をおもしろくする。 2019.04.01

Photo/Saeko Ishikawa Text/Haruka Suwa(ともにTEC-LAB+編集部)