Warning: Use of undefined constant works - assumed 'works' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/users/web11/7/8/0241787/www.toppan-tec.co.jp/wp/wp-content/themes/tec/functions.php on line 94
ものづくりの人々。[紙営業士 西谷 浩太郎さん/第4回]|TEC-Lab+|TOPPAN EDITORIAL COMMUNICATIONS

INTERVIEW

2019.03.4

ものづくりの人々。[紙営業士 西谷 浩太郎さん/第4回]

ひとつの印刷物が完成するまでに、その過程にはさまざまな人がかかわっています。
彼らは日々、どのように考え、制作の現場に向き合っているのか。
あらゆる職種の方々へのインタビューを通して、
今の時代において、人々がものづくりで大切にしていることを探ります。
一人目に登場していただいたのは、平和紙業の紙営業士・西谷浩太郎さん。
紙加工への情熱が生まれたきっかけや仕事のこだわりなどを、じっくりと語っていただきました。

 

西谷浩太郎

にしたに・こうたろう/1977年、大阪生まれ。立命館大学政策科学部卒業。2001年、平和紙業株式会社入社。入社のきっかけは就職活動で手にした会社案内のデザインに惹かれたことから。大阪の本店で7年間勤務した後、東京へ異動。営業統括本部東京販売推進部に所属し、紙のプロモーション活動を行う。紙加工によるものづくりにも詳しく、多くのデザイナーから頼られる存在である。

平和紙業株式会社
1946年創立。ファンシーペーパーを中心に取り扱う紙の専門商社。 特殊紙、高級紙、技術紙をはじめとする各種紙素材の開発、販売、輸出入のほか、紙を素材とする新商品開発と商品化を行う。
http://www.heiwapaper.co.jp/

第4回 「等身大の鏡を持ちなさい。」

デザイナーさんや印刷会社の方から紙の相談を受ける仕事は、師匠である岡さんの専門でしたが、岡さんが退職された後はどうなったのでしょうか?

西谷:辞めてからも岡さんはしょっちゅう会社に顔を出しに来ていましたが、とくにデザイナーさんとのパイプ役の仕事は、私が引き継ぐことになりました。もう、毎日ができないことの連続です。知識も経験も大きな差がありますし、岡さんは取締役だったので、岡さんの立場だからできることもありました。なのでデザイナーさんから無理な相談が来ても、岡さんは「できるよ」と即答するんです。それを20代の私が同じように言っても、上司に上げたときに「は?」ってなりますよね。

そうですね、それは(笑)。

西谷:「できます」「やれます」というのは岡さんの口癖で。岡さんが辞めてからは自分が調整役となったので、おかげでいろいろと大変な思いをしました。
デザイナーさんから難しいオーダーがあったときのことですが、岡さんも交えて話をしていたら加工屋さんが「できるかも」と言ったのですね。数日後、加工屋さんに「あの件、できています?」と聞いたら、「できるわけないやん!岡さんの前でできへんって言ったら怒られるやん」って(笑)。はしごを外されてしまったのです。
それでデザイナーさんに「やっぱりできないんです」と言いに行ったら、「前にできるって言ってたやん!」となってしまって。そうしたらそのデザイナーさん、私の知らない隙に岡さんに言ったようで、今度は岡さんから「西谷くん、岡さんが言っているからってもう一度加工屋さんに行ってみてくれんか」って。行ったり来たりです。

陰でアドバイザーが糸を引いているような(笑)。

西谷:そうですね。でも、今になってみると、岡さんの「できるよ」は一方では大事なことだと思っていて。平和紙業に行けば岡さんが何とかしてくれる、そうやってみなさんが頼って来てくれる関係ができていたのです。

できる前提で考える

西谷:とはいえ、聞く件、聞く件、できないようなことばかりでした。でも、私たちの仕事はデザイナーさんの作りたいものが実現できるように間を調整することです。納期や予算のことを考えると、あまり期待を持たせないように「難しいかもしれません」と先に言ってしまう対応の仕方もありますが、岡さんはそういうことを絶対にしませんでした。それどころか、「もっとこうしたらおもしろくなりますよ」と話を広げるんです。デザイナーさんのほうも「そんなことまでできるんですか」と目が輝きます。勢いというか、岡さんはどんどん話を広げていくんです。それが岡さんの人を惹きつける力だったように思います。

私も物事を楽観的に、できる前提で考えるようになったのは岡さんの横にいたからだと思います。デザイナーさんからオーダーを聞いたらはじめは無理だと思うようなことでも、本当にそうなのかな、いや、こうすればいけるかもしれない、と探っていくんです。それで何とかできたこともあったし、失敗して謝りに行ったこともあります。岡さんが辞めてからの3年間は、私にとって必死になって進んできた時代です。

そう、岡さんからよく言われたことのひとつに、今も守っていることがあります。「平和紙業の紙をぜひ使ってください。よろしくお願いします」と言わないことです。

なぜですか?

西谷:営業としてはそういう提案の仕方もひとつの正解だと思いますが、紙は、デザイナーさんに好きに選んでもらうものなんです。突き詰めれば他社さんの紙だっていいわけで、もしそのときに私たちの紙で合うものがあれば、「平和紙業の紙でこれが合っていると思いますよ」と提案します。いい関係ができていれば、必要なときに平和紙業の紙を選んでもらえるはずです。無理やり平和紙業の紙を使ってもらうような言い方は、今までに一度もしたことがありません。

‥‥もしかしたら、今でも岡さんを追いかけているのかもしれません。真似ではなく、思考というか、日々の仕事として私はやっていっているような気がします。

今でも心に残っている言葉などはありますか?

西谷:今になって身に染みる言葉があります。「等身大の鏡を持ちなさい」。岡さんがよく言っていました。平和紙業という会社の立ち位置の中で、今そのときの自分という中で、できることを考えていく。大きすぎず小さすぎず、自分と等身大の鏡を持っていれば、どんな仕事に対しても空回りせずに受けとめられるのではないでしょうか。

自分の等身大がどのようなものなのかは日々探っていますが、ひとつ思うことは、私たちはやっぱり紙屋なんです。今、紙の使用量が右肩下がりに落ちていく中で、何かもっとお金になるようなビジネスがあるんじゃないかってあたふたすることもあります。でも、私たちのベースにあるものというか、平和紙業という紙屋でやってきたところに対して、新しいことを考えていかないと。全然ちがう規模のことでやっても、あまりうまくいかないんじゃないか。消極的、保守的かもしれないですけど、私はそれでやっていけるところまでいこう、そういうふうに思っています。

第5回へ

←第3回へ

目次
・第1回 実は、紙が好きなわけではないんです。 2018.10.12
・第2回 OKフロートで検索したら、西谷と出てきた。 2018.10.26
・第3回 師匠のこと。 2019.02.08
・第4回 「等身大の鏡を持ちなさい。」 2019.03.04
・第5回 予期せぬことが、紙をおもしろくする。 2019.04.01

Photo/Saeko Ishikawa Text/Haruka Suwa(ともにTEC-LAB+編集部)