INTERVIEW

2018.10.26

ものづくりの人々。[紙営業士 西谷 浩太郎さん/第2回]

ひとつの印刷物が完成するまでに、その過程にはさまざまな人がかかわっています。
彼らは日々、どのように考え、制作の現場に向かっているのか。
あらゆる職種の方々へのインタビューを通して、
今の時代において、人々がものづくりで大切にしていることを探ります。
一人目に登場していただいたのは、平和紙業の紙営業士・西谷浩太郎さん。
紙加工への情熱が生まれたきっかけや、仕事のこだわりなどを、じっくりと語っていただきました。

第2回 OKフロートで検索したら、西谷と出てきた。

紙加工の開発にかかわってきたなかで、とくに思い入れのある紙はありますか?

西谷:ひとつだけあげるならば、OKフロートという紙です。普通の色紙なのですが、ホットスタンプという型押しの熱で紙の色が変化するんです。ここを見てください。色が変わっているのがわかると思います。

ええ。しましまの模様もありますが、印刷でやったわけではなく?

西谷:印刷ではありません。熱を加えていない部分が紙の地の色で、熱を加えた部分が濃くなっているところです。よく見ると濃さのちがいがあると思います。マニアックな話をすると、少し濃くなっているところは120度で、さらに濃くなっているところは160度の温度で押しています。

そんな熱い温度で押して、紙が燃えてしまわないのですか?

西谷:燃えないですし、焦げもしません。アイロンに近いイメージです。この紙で何がしたかったのかというと、温度の変化だけでグラデーションを作れないかなと思ったんです。

熱でグラデーションを?

西谷:はい。それこそ10度刻みとかで、温度の設定を細かく変えて何度もテストしました。結果的には、あまりちがいが出せなくてグラデーションはできませんでしたが、3諧調の濃淡は作ることができました。

西谷:そう、たぶんそのときからですね。紙の加工というものに、どんどんのめり込んでいきました。10年前に転勤で大阪から東京へ来たのですが、私のこういう無謀な紙の実験に付き合ってくれる紙加工会社さんと出会えたことが大きかったです。

デザイナーさんから無茶な相談を受ける西谷さんが、逆に紙加工会社さんには無茶ぶりをする側になるのですね(笑)。

西谷:そうです(笑)。OKフロートへの型押しだったら、コスモテックさん。紙加工のテストをやりに、朝から晩まで一日中工場にこもるのを週4日はやっていました。若気の至りというか、ほかの仕事もあったのに通いすぎですね(笑)。

紙の新しい可能性を引き出す

西谷:そんななか、OKフロートがちょっと透けるということに気づきました。かざしてみるとわかると思います。熱で変化したところが透けています。

ええ。それに、裏側の紙の色が淡く透けて見えています。

西谷:そうなんです。紙が透けるのだったら、裏に色紙を貼りつければうっすらと出るんじゃないかと考えたのです。

なぜここまでOKフロートに熱をあげたのですか?

西谷:OKフロートは当初、書籍のカバーくらいでしか使われていませんでした。詩集や句集など、昔ながらな感じの表現が多かったこともあって、デザイナーさんたちの認知度が低かったんです。でも、加工の実験を続けていくうちにいろんな発見があって、この紙でできる表現がもっとあるとわかってきました。それで、使い方をうまくPRすれば認知度も上がって、使ってくれる人が増えるのではないかと思ったんです。

なるほど。

西谷:こういう使い方しかできないよねって思われていた紙を、いや、何か視点を変えればまったくちがう使い方ができるんじゃないか?って。型押しの温度を変える、ちがう厚さの紙を試す、ほかの色の紙ではどうか‥‥。そんなことを3年間、執着といってもいいほど延々とやっていました。一時期、OKフロートで検索したら「西谷」と出てきたこともあって。

なんと。

西谷:で、ある日、「もういいや」ってなりました。もうすべてやり尽くして、実験することがなくなってしまったんです。

それほどまでとは‥‥。

西谷:その結果、OKフロートの相談はぜんぶ私に来るようになりました。

デザイナーさんに対しても提案ができるし、逆に、デザイナーさんからも西谷さんに相談しよう、という流れが生まれていったのですね。

西谷:誰に頼まれたわけでもなくやっていたことでしたが、結果的には仕事に結びつきました。そういう意味でも、私にとってOKフロートとの出合いは大きかったです。

(第3回へ続く)

平和紙業株式会社
1946年創立。ファンシーペーパーを中心に取り扱う紙の専門商社。 特殊紙、高級紙、技術紙をはじめとする各種紙素材の開発、販売、輸出入のほか、紙を素材とする新商品開発と商品化を行う。
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